■こんな本を読んだ −−2007年10月


●このところ小説を続けて読んでいます。自分の好みに合致する作品との出会いを期待しているのだけど、これがなかなか……。わりあいと高ポイントだった作品をいくつか。

◎森絵都『カラフル』文春文庫
自殺した少年の魂救済物語。といっても、はやりのお涙頂戴ものでなく、しっかり構成された秀作。児童文学賞作品だそうだけど、少女売春やら不倫、リストラも絡む内容からして、ミドルティーン向けか。

◎伊藤たかみ『ミカ×ミカ』文春文庫
『ミカ』の続編。中学生となった双子の男女の成長物語。思春期のラブストーリーがカラッと描かれて、実に爽快。ぼくは好きです。

◎長嶋有『猛スピードで母は』文春文庫
さらさらと読んだ。さわやかな印象のほかに残るものはない。でもなんだか気分がいい。そんな不思議な読後感。

◎佐藤哲也『ぬかるんでから』文春文庫
シュールなのにやけにリアリティを伴う世界が展開される短編集。まだはじめのほうを読んだだけでして、ズドンとツボにはまったものがあれば、ちと苦手なものもあり、この作者に対する評価は定まっていません。

◎恩田陸『光の帝国 常野物語』集英社文庫
満点。言うことなし!

◎幸田文『崩れ』講談社文庫
晩年の著者が山崩れの現場になぜか心を引かれ、数々の「崩れ」を調べ、訪れたエッセイ。老境に至った感性豊かな作家の心境が描かれています。

◎角田光代『あしたはアルプスを歩こう』講談社文庫
テレビ撮影に誘われて、軽いノリでスイスへ行ったら、冬のスイス・アルプスをトレッキングすることに…。思いがけない体験にも思考を巡らし、エッセイにまとめるところは、作家としてのの本領発揮か。

◎石川直樹『いま生きているという冒険』理論社(よりみちパン!セ)
若い冒険家が、ティーンエイジャー向けに書いた一冊。七大陸最高峰登山から地球南北縦断、熱気球での太平洋横断(失敗)まで、この人はチャレンジャーです。

◎服部文祥『サバイバル登山家』みすず書房
サバイバル物語も、登山文学も好き。その両者がタイトルについているとなれば、高くても(2400円)迷わず購入。最低限の食料だけ持ち、山菜や釣ったイワナを食べつつ山行する……こういう発想をする登山家もいることに驚嘆。

◎野田知佑『カヌー犬ガクの生涯』文春文庫
ガクとの思い出を綴った一冊。あちこちで読んだことのあるエピソードが多く、既視感が強いのだけど、野田作品が好きなんです。

◎椎名誠『本などいらない草原ぐらし』角川文庫
読んだ本、買った本を巡るエッセイ集。椎名誠にはこの手の著作が何冊もあり、それらがぼくのブックガイドにもなっています。

◎アーネスト・シャクルトン『エンデュアランス号漂流記』中公文庫
何年も前に書店で迷った末に買わなかったこの本が、上の椎名本で取り上げられていて、改めて興味を持ち購入。100年前に南極の氷塊に閉じこめられた探検隊一行が、全員無事生還するまでの記録。

◎鈴木直樹『マンモスを科学する』角川学芸出版発行、角川グループパブリッシング発売
「愛・地球博」で展示されたという冷凍マンモス。そのプロジェクト推進者が綴る顛末記。学術的記述とエピソードが混在し、ちょっと読みにくい。でも太古と現代を結ぶロマン(?)が伝わってきます。

◎林丈二『路上探偵事務所』講談社文庫
いわゆる路上観察学作品。この人の発想と、ユニークなものを発見する観察眼は楽しい。1時間半にわたり野良犬を尾行するなんて、ふつうやりませんよ。


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