■こんな本を読んだ −−2013年8月

暑さでボンヤリしてしまい、感想がまとまりません。
今回は主に内容紹介ということで。

◎石山衣織『落馬脳挫傷〜破壊された脳との闘いの記録〜』 エンターブレイン
落馬して重傷を負った騎手・石山繁を支え続けた妻が、赤裸々な心情を綴った闘病とリハビリの記録。

◎松本方哉『突然、妻が倒れたら』新潮文庫
家事全般を切り盛りしてる主婦がくも膜下出血で倒れ、高次脳機能障害という後遺症が残った。そのとき家族は、家庭はどうなるのか……。ニュースキャスターの著者が自身の体験と介護の苦悩を綴る。

◎本岡類『介護現場は、なぜ辛いのか 特養老人ホームの終わらない日常』新潮文庫
作家である著者が、老母の介護と「作品のネタ探し」のため、特別養護老人ホームでアルバイトをする。そこで見た介護現場の実態と、介護者としての心の苦悩を語る。後期高齢者世代の親を持つ身として、他人事でない現実に身が震える。

◎藤井誠二『殺人を予告した少年の日記―愛知県西尾市「ストーカー」殺人事件』ワニブックス
連日報道される「酒鬼薔薇聖斗」の凶行に触発され、同級生の少女を刺殺した少年。その日記をもとに、彼の心の軌跡を辿る。

◎奥野修司『心にナイフをしのばせて』文春文庫
「二八年前の酒鬼薔薇事件」と呼ばれる事件で、高一の長男を失った被害者家族の、その後の人生を追ったノンフィクション。被害者家族にとって事件は風化することなく、「心は凍り続けたまま」という告白に胸が痛む。

◎清水潔『桶川ストーカー殺人事件―遺言』新潮文庫
警察にストーカー被害を訴えながら黙殺され、結果、刺殺されてしまった女子大生。写真週刊誌記者として事件に関わった著者は、事件の異常性と警察の怠慢に突き動かされ、次々とスクープ記事を発表した。その舞台裏を描いた、桶川事件の真実。

◎田宮俊作『田宮模型の仕事』文春文庫
ぼくらの世代だとプラモデル、若い世代にはミニ四駆のメーカーとして知られるTAMIYAの、創業者が自ら綴った奮闘記。模型作りのためになら、本物のポルシェも解体し、世界各地を飛び回って実物の戦車に試乗する……。その本気さが、田宮を世界一の模型メーカーへと成長させた原動力。

◎ブライアン・サイクス著、大野晶子訳『イヴの七人の娘たち』ソニー・マガジンズ
細胞内にあるミトコンドリアという器官には、母親の遺伝情報のみ子孫に伝えるDNAが存在する。多数のミトコンドリアDNAを集めて解析した結果、ヨーロッパ人の母系祖先は七人の女性であることが分かった。彼女たちはどこで、どのような生活を送っていたのか……。最先端の遺伝子工学を駆使して人類のルーツを探る、ミステリー並みに読み応えのある科学ノンフィクション。

◎斎藤健次『マグロ土佐船』小学館文庫
遠洋マグロ漁船でコック長として働いた著者の手記。過酷な漁に従事する漁師たちの姿がイキイキと描かれ、コック長としての苦悩が吐露される。

◎吾妻ひでお『うつうつひでお日記』角川書店
マンガ家・吾妻ひでおが「事件なし、波乱なし、仕事なし、鬱でアルコール中毒、読書と抗うつ剤と貧乏の日々」(本書より)を描き綴った日記。吾妻ワールドに興味があるなら楽しめるはず。

◎高野秀行『幻獣ムベンベを追え』集英社文庫
アフリカ・コンゴ奥地の湖に、伝説の生物ムベンベを探すために遠征する、早稲田大学探検部員たちのドタバタ顛末記。

◎和泉雅子『笑ってよ、北極点』文藝春秋
女優・和泉雅子が北極点に到達するまでの奮闘記。その道のプロである植村直己とはひと味違う、等身大の冒険物語。

◆以下は小説です。

◎大石圭『アンダー・ユア・ベッド』角川ホラー文庫
憧れの女性の近くにいたい。その願望を叶えるため、密かに彼女の家に出入りする主人公。やがて彼女が夫から家庭内暴力を受けていることを知り、助け出そうと危険な賭に出る。果たして彼は異常犯罪者なのか、純粋な理解者なのか……。

◎黒川博行『大博打』新潮文庫
◎同『二度のお別れ』創元推理文庫
◎同『キャッツアイころがった』創元推理文庫
いま気になっているミステリー作家の本を続けて読んだ。いずれも良くできたエンタメ作品。

◎朱川湊人『水銀虫』集英社文庫
朱川ワールド全開のノスタルジックホラー短編集。

◎那須正幹『ぼくらは海へ』文春文庫
「ズッコケ三人組」シリーズの著者が描いた、小学六年の少年たちの一夏の物語。それぞれに家庭の事情があり、鬱屈した心を抱える少年たちが、自らの手で“自由”を手に入れようと試みるが……。湯本香樹実『夏の庭』的な世界を想像したら見事に裏切られ、エンディングでは唸ってしまった。


うえへもどる▲

inserted by FC2 system