06/10/13 なぜアメリカは許されるのだ?

 北朝鮮が核実験を実施。国際社会では、また世間でも、経済制裁のいっそうの強化を、という声が強まっている。
 そういう言説に接するために、じゃあイスラエルはどうなるのよ、インドとパキスタンはどうなのよ、と反感を感じる。

 イスラエルの核保有は、公にはなっていないが、周知のこととされている。なのになぜ、国連でその疑惑が追及されないのか。査察や非難決議がなされないのか。インドとパキスタンは、なぜすんなりと核保有国の仲間入りができたのか。
 いやそれ以前に、なぜ米ソをはじめとする大国の核保有は認められ、その他の国々を認めないのは、どのような理由からなのか。

 筋が通っていない。まったく理解できない。

 つまるところ、単に「核兵器」という既得権を手放したくないがために、他の核後進国筋に難癖つけているだけじゃないか。政治的思惑、経済的利害が一致する国には認めているだけじゃないか。そういうのをダブルスタンダードという。フェアじゃない。

 北朝鮮が(あるいはイランが)「ならずもの国家、テロ国家だから」というなら、じゃあアメリカはどうなのか、と問いたい。
 もはやアメリカ自体が、根拠のない戦争を仕掛け、アフガニスタンやイラクの無抵抗の民間人を大量殺戮しているテロ国家だ。「戦略上必要であれば、小規模核兵器を使うこともあり得る」と明言しているのだ。そんなならずもの国家・アメリカの核兵器も、取り上げるべきではないか?

 経済制裁を強化して孤立させ、囲い込んでいく。追いつめられ、国家存亡の瀬戸際に立たされたとき、起死回生を狙って(やぶれかぶれで?)砲弾発射のスイッチを押す……。
 そちらのシナリオのほうが、よほど恐ろしい。
 そんな「窮鼠猫を噛む」状況を生み出さないことが、国際社会に求められる。そのために外交が必要なのだ。
 同時に、核大国が今後の核兵器開発を凍結し、保有している核兵器も削減し、「我々も捨てるから、あなた方(北朝鮮やイラン)も開発をやめろ」と迫るのが、本筋というものだ。


06/9/26 まだ「総理」じゃないのに…

 言論機関であるはずのマスコミの、言葉に対する無神経ぶりにいらだっている。

 「総理大臣に明日就任する」
 「次期総理に予定されている」
 「臨時国会で首相に指名される」
 「総理に選出されます」

 ここ2、3日にマスコミで耳(目)にした、安倍晋三関連ニュースからの引用だ。
 正しい言い方は、「明日就任する見込み」「首相に指名される見通し」なのに、なぜマスコミは断定口調で報じるのか。

 安倍は先日の党首選挙で「自民党党首」に選ばれただけだ。本日、国会が召集され、国会議員により内閣総理大臣指名選挙(首班指名選挙)が行われ、そこで選ばれた者が総理大臣となる。この選挙が終わるまでは、あくまでも候補者の1人だ。なのに、もう決まっていることとして報じるのは、どういうことか。

 「明日就任する」と誰が決めたのか。誰が「予定」を定めたのか。選挙前になぜ「指名される」「選出される」ことがわかっているのか。おかしいじゃないか。

 実態として、多数派である自民党の党首が選出されるのは、まず間違いないだろう。けれど、いかに確実な情勢であっても、決定するまでは憶測であり、見通しだ。首班指名選挙を行わないうちに断定するのは、同選挙制度を軽視し、空洞化する言動だ。そもそも、決まっているなら、選挙なんかやらなくていいじゃないか。違うか。

 昨晩、ニュースを受けて話をしたところ、小学生の娘も、細君までも、安倍はもう首相になったものだと思っていた。娘が「じゃあ今の総理大臣は誰?」というので、小泉さんだと言ったら、フーンという顔をしていた。
 安倍新首相を誕生させる(既定事項として認知させる)ための世論操作は、このとおり、実にうまくいっている。マスコミは、意図してかどうか知らないが、その片棒を担いでいる。


06/9/22 判決の意味がわからないのか!?

 東京都教育委員会が、入学式や卒業式で教職員が国旗に向かって起立し国歌斉唱するよう通達したのに対し、都立学校の教職員ら401人が都と都教委を相手取り、通達に従う義務がないことの確認や損害賠償を求めた訴訟の判決が21日、東京地裁であった。

 難波孝一裁判長は、「通達や都教委の指導は、思想・良心の自由を保障した憲法に違反する」との違憲判断を示し、教職員に起立や国歌斉唱の義務はなく、処分もできないとする判決を言い渡した。また、慰謝料として1人当たり3万円の賠償を都に命じた。

(読売オンライン・9月21日付)

 東京都の教育の場での君が代・日の丸“強制”問題が、明確に違法とされた。
 この判決を受けての小泉首相のコメント。
 「法律以前の問題じゃないでしょうかね。人間として、国旗や国歌に敬意を表すというのは」として、東京地裁の判決に疑問を投げかけた。

(毎日新聞・9月22日付朝刊)

 ちなみに被告側の教育長は、オリンピックなどでは皆起立しているではないか、などとも発言しているそうだ。

 書くのもバカバカしいが、問題の本質は、個々人が“国旗や国歌に敬意を表す”るか否かではなく、“国旗や国歌に敬意を表することを強いる”ことだ。指導に従わなければ罰則を与えるぞと、脅しながら強制することだ。

 東京都教育委員会は、卒業式・入学式での国歌斉唱に着席する生徒がいたら、指導教員が責任を負うという指導をしてきた。教職員に対してだけでなく、生徒をも巻き込み、連帯責任を求めたのだ。そんな上意下達の全体主義的な方針が、司法の場で断罪されたのだ。
 けれど、そこはさすがに小泉首相。靖国参拝に違法判決が出されても「理解できない。私は参拝を続ける」と無視してきただけのことはある。司法軽視に筋が通っている。


06/9/21 安倍勝利は当然

 安倍晋三官房長官が、おおかたの予想通り、自民党の次期総裁に選出された。7割近くの得票だったとか。「目標に達しなかった」などと揶揄する声もあるが、圧勝だったのは疑いようがない。

 小泉首相がやってきたことを顧みれば、この圧勝劇は当然の結果だ。
 「勝ち組」と「負け組」に人を選別する政策をとってきた小泉政権。頑固で強いリーダーを演じ続けた小泉首相が、後継者として安倍晋三を指名。「勝ち組」になりたい党員・議員は、こぞって勝ち馬に乗った。そして安倍晋三圧勝。それだけのことだ。

 政治家一家に生まれ育ち、会社勤めの経験もロクになく、庶民の生活ぶりなど想像もできない世襲議員。軍事問題や北朝鮮問題にはやたらと威勢のいい発言をするが、それ以外の政策はほとんど持ち合わせていない。一方で、日本歯科医師連盟事件、マンション耐震偽装問題、ライブドア事件など、数々の疑惑には必ずその名が浮上するダーティーぶり。統一協会関連団体の大会に祝電を贈ったのも今年のことだ。
 そんな薄っぺらで怪しげな人物でも、「支持すればおこぼれにあずかれる」という理由で、総裁になれる。自民党という政党の底の浅さが窺い知れる。(その意味で、小泉首相が「自民党をぶっ壊」したのは確かだ)

 なお、安倍晋三は昨年10月、アメリカ政策研究所が主催した「日本と中国を、どのようにして戦争に突入させるか、そのプラン作り」の会合に、他の政治家・官僚とともに出席したという。(「きっこの日記」9/21参照)

 こういう人物が首相になろうとしているのが現実。もはや腹をくくり、覚悟を決めておいたほうがよさそうだ。


06/9/13 酒酔い運転は急増したわけじゃない

 たとえば山あいの川に遊びにゆく。砂礫の川原が広がり、裸足で歩くと気持ちがいい。
 しばらく歩いていたら、足の裏に痛みを覚えた。ふと見ると、小さなガラスのかけらが落ちていた。危ないな、と、拾おうとしたら、近くにも別のガラス片が。改めて周囲を見渡すと、そこにも、ここにも、たくさんのガラス片が……。
 これが、「あるのに、あると認識されていない状態」だ。

 このところ酒気帯び運転による死亡事故の報道が相次いでいる。急増したように感じるかもしれないが、そんなことはない。これまでにもたくさんあった。
 2005年5月、仙台育英高校のウォークラリーの列に飲酒・居眠り運転のRV車が突っ込み、3人が死亡、20人が重軽傷。1999年11月、東名高速道路で酒酔い運転のトラックが乗用車に追突し、幼児2人が焼死……。
 交通事故の被害者は飲酒運転撲滅を訴え、それを支援する団体もあった。けれど、いくら声をあげても、訴えは世間の中心にまで浸透しなかった。「あるのに、あると認識され」なかった。川原に散らばるガラス片だったのだ。
 そのガラス片を放置していたからこそ、福岡市職員が事故を起こし、子ども3人が被害に遭った。そしてその後、たくさんのガラス片が散らばっていることに、世間が“気づいた”のだ。

 パロマ製ガス湯沸かし器の不具合による死亡事故も、三菱ふそうのリコール問題も、過去に数々起こった公害にしても、告発する報道が起こるまで、「そこにある問題」とならなかった。何年も前に被害が発生しているというのに。
 記者たちの怠慢、認識不足と追求することもできるだろう。しかし同時に、重大事が発生するまで、その兆候を受け入れられない社会にも欠陥がある。
 なにしろ、飲酒運転を軽く考え、容認(黙認)する社会だからこそ、酒を飲ませる店に駐車場があり、飲んだ帰りにハンドルを握るドライバーが相次ぐのだから。

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