■こんな本を読んだ −−2012年1月

久しぶりに投稿します。
ここ半年くらいに読んだものからのピックアップです。


◎長谷川博一『殺人者はいかに誕生したか 「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く』新潮社
臨床心理士として、重大事件犯罪者に心理学的アプローチをし、犯行に至った背景に迫る。同時に、「裁判所は量刑判断の場であり、真実解明の場ではない」「犯罪者の生育環境から心理形成を解き明かさないことには、『再発防止』には結びつかない。裁判(陪審員)制度には、その観点はない」と、現在の裁判(陪審員)制度への異議を唱える。

◎森功『黒い看護婦ー福岡四人組保険金連続殺人』新潮文庫
平凡な主婦が殺人犯へと転落していく経緯を描いたノンフィクション。犯行グループは、主犯格と彼女に従った3人という構成だが、3人がなぜ、単純な作り話にそそのかされたのか、未だに理解に苦しむ。それが人間というものなのか?

◎平山夢明『異常快楽殺人』角川ホラー文庫
実在する大量殺人者7人が犯した犯罪の実態と、その背景に迫るノンフィクション。(※アマゾンのレビューには、内容の「信頼性に難あり」の意見も)

◎ロバート・カレン『子供たちは森に消えた』ハヤカワ・ノンフィクション文庫
『異常快楽殺人』に触発されて再読。末期のソ連の社会風潮なども丹念に描き、犯罪心理や犯行が生み出される社会状況に迫っている。

◎福田ますみ『でっち上げー福岡「殺人教師」事件の真相』新潮文庫
ある保護者からの訴えで、気弱な教師に「殺人教師」のレッテルが貼られる。モンスター・ペアレンツと事なかれ主義の学校、二元的な善悪に囚われるマスコミに追い込まれていく教師……。幾度となく繰り返され、そのたびに反省してきたはずのこの社会が、ここでもまた冤罪を生み出している。その空恐ろしさをあぶり出す。

◎石井光太『遺体ー震災、津波の果てに』新潮社
東日本大震災での死者・行方不明者は2万人にも及ぶ。人口4万人の岩手・釜石でも、1100もの命が失われた。その膨大な数の遺体を、短期間で身元判明させ、遺族に戻し、荼毘に付さなければならない……。遺体安置所を巡る極限状況を描いたノンフィクション。

◎萩尾信也『三陸物語』毎日新聞社
未読だけどご紹介。毎日新聞に現在も連載されている、東日本大震災被災者の体験談の聞き書き。会話が地元の言葉のまま書かれていて、宮城に親族のいるぼくには音声として聞こえ、涙なしには読めなかった。

◎石川直樹『最後の冒険家』集英社文庫
太平洋横断にチャレンジし行方を断った気球冒険家の軌跡を、副操縦士として同乗経験のある著者が追う。2008年度開高健ノンフィクション賞受賞。

◎岡留安則『「噂の真相」25年戦記』集英社新書
反権力スキャンダリズム雑誌「ウワシン」の創刊から休刊までの幾多のエピソードを編集長自らが綴る。学生時代に読んだあの記事、あのエピソードの背景もあって、興味深く読んだ。

◎西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』角川文庫
この人、文章もうまいなーと思った。もともと中学生向けの本。その世代でもわかるように、でも生々しすぎないように、自身の過去を赤裸々に綴るさじ加減が絶妙。子どもに読ませたい一冊。

◎薬丸岳『天使のナイフ』講談社文庫
◎東野圭吾『さまよう刃』角川文庫
◎黒武洋『そして粛清の扉を』新潮文庫(再読)
少年犯罪の被害者遺族が抱く復讐心を描いた小説。

◎篠田節子『斎藤家の核弾頭』新潮文庫
管理社会となった近未来の日本を舞台に、政府に対して反旗を翻した男とその家族の物語。単純に面白かった。

◎東野圭吾『超・殺人事件ー推理作家の苦悩』新潮文庫
「推理小説誕生の舞台裏をブラックに描いた危ない小説8連発」(アマゾンより)。筒井康隆にも通じる「毒」がクセになりそう。

◎宮田珠己『ときどき意味もなくずんずん歩く』幻冬舎文庫
脱力系エッセイ。著者の軽やかに間抜けな姿勢がいいです。

◎鈴木みのる・金沢克彦『風になれ』東邦出版
プロレスラー・鈴木みのるの軌跡を描いたインタビュー。プロレスファンなんで、ワクワクしながら読みました。


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